「ファインダー越しに、鳥の瞳と目が合った。」
「ファインダー越しに、鳥の瞳と目が合った、、、かも。」
そんな参加者様の声が冬の澄んだ空気に溶けていく、贅沢な時間が流れました。
2026年1月17日、NatureClips(ネイチャークリップス)は、OM SYSTEM(オーエムデジタルソリューションズ)様のご協力のもと、当社が指定管理をさせていただいている豊田市自然観察の森をフィールドに「デジタル一眼カメラと一緒に野鳥観察&撮影さんぽ」を開催しました。
こんにちは、事務局長のKです。
野鳥撮影は、カメラのジャンルの中でも特にハードルが高いと思われがちです。「鳥がどこにいるか分からない」「せっかく撮れてもピンボケばかり……」そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、今回のイベントでは、私Kが野鳥観察と撮影の両方の講師役を務め、「自然を深く知って、確実に残す」ための撮影方法を余すことなくお伝えしました。
最新の OM-1 Mark II と超望遠ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II という強力な武器を手に、参加者の皆様が何を学び、何を感じたのか。当日公開した「失敗しないカスタム設定」や、私の持論である「空気の壁」の正体、そして鳥の生態を知ることがなぜ最強のスキルなのかを詳しく解説します。

ずらりと並んだ機材
1. プロが伝えた絶対の鉄則:「ノイズは我慢、ブレは厳禁」
講習の冒頭、私は参加者の皆様に最も重要な「マインドセット」を強調することからはじめました。
「多少のザラザラ(高ISOノイズ)は後で何とかなる。でも、被写体ブレは二度と戻らない。今日はシャッタースピードを死守しましょう!」
野鳥撮影において、初心者が最も陥りやすい罠は「暗くなるのを恐れてシャッタースピード(SS)を下げてしまうこと」です。しかし、野鳥は人間が思う以上に常に細かく動いています。枝に止まっているように見えても、首を振ったり羽を震わせたりする一瞬の動きで、写真は容易にボケてしまいます。
今の時代、ISO感度が上がって発生したノイズは、OM Workspaceなどの現像ソフトや最新のAIノイズ除去技術で驚くほど綺麗に消せます。しかし、ブレてしまった羽毛のディテールは、どんな最新技術でも復元できません。「ノイズは救えるが、ブレは救えない」。このプロの優先順位こそが、打率を上げる最大の鍵なのです。
2. 成功率を劇的に上げる3段階ステップ:【探す →入れる →寄る】
換算800mm相当にもなる超望遠域を扱う際、初心者が必ず直面するのが「鳥がどこにいるか見つけられない」「見失う」問題です。ファインダーの中が真っ暗だったり、ただの枝しか映っていなかったり……。これを解決する「3ステップ法」を強くお伝えしました。
① 【探す】:最初からズーム最大はNG
いきなり400mm(換算800mm)で探すのは、トイレットペーパーの芯を覗きながら、広い森の中で飛び回っている一匹のハチを探すようなものです。まずはズームを最短(100mm付近)にして視野を広く保ち、肉眼や双眼鏡、鳥の鳴き声を頼りに「だいたいあの辺りの枝」という風に位置を特定します。
② 【入れる】:カメラに「獲物」を教える
視野が広い状態のまま、ファインダーの中心に鳥を入れます。ポイントは鳥がいると思う方向にまっすぐ向いてカメラを操作することです。ここで初めてシャッターボタンを半押しして「鳥認識AF」を動作させ、カメラのAIに被写体をロックオンさせます。OM-1 Mark IIの認識力があれば、多少の枝被りがあっても鳥本体や瞳を見事に捉えてくれます。
③ 【寄る】:確信を持ってズームアップ
鳥を画面内に捕らえ、AFが追従しているのを確認してから、ゆっくりとズームを伸ばして大きく写します。 この順序を守るだけで、鳥を見失ってシャッターチャンスを逃すストレスから解放されます。
3. 現場の記録:静かなフィールドで苦しんで、なんとか見つけ出した21種
この日は、事前の予想に反して鳥たちの影が薄い、ほんとうに静かな立ち上がりでした。「今日は手強い一日になるぞ」と講師としてはドキドキです。鳥が少ないからこそ、一羽一羽との出会いを丁寧に味わう「濃密な観察」が始まりました。
林の中と水辺の鳥たち
林の中を皆でどんどんと歩いていきます。下見で見つけたいろんな鳥が全くいない。気配を感じない。そんな厳しい時間が過ぎていきます。ルリビタキやミソサザイなど、私ともう1名のスタッフには確認できたものの、参加者の皆さんの前には姿を見せてくれず。。。そんな中、定番のメジロやエナガ、そしてコゲラが近くまでやってきてくれ、少しだけホットしました。林を抜けた池のエリアでは約50羽のマガモが霞の中ゆったりと浮かび、その近くで1羽のカワウが休息してました。さらに奥には、美しいオシドリが6〜7羽。こちらも休息中です。オシドリの複雑な羽の色は、OM SYSTEMの階調表現力を試す絶好の被写体ですが、鳥たちは悲しくも50~60m離れた遠方にいます。皆さんがシャッターを切ってくれてたのが救いです。

【写真】湿地に出現したルリビタキを皆で待っているところ


【写真】近くにコゲラがやってきた
擬態の達人「ビンズイ」との知恵比べ
復路、一番の盛り上がりを見せたのは田んぼにいた1羽のビンズイです。 彼らは田んぼの枯れ草に見事に溶け込んでおり、肉眼では発見が極めて困難です。「どこだどこだ?」と全員で目を凝らし、「あそこに影が!」「いたいた!」と発見が共有される瞬間。この「見つけた喜び」の連鎖こそが、さんぽイベントの真髄です。一度見つけさえすれば、OM-1 Mark IIの鳥認識AFが地面との境界線を鮮明に描き出してくれました。このビンズイが飛び出した瞬間、私を含めて1羽と思い込んでいたビンズイが、同所から3羽も飛び出しました。皆で再び驚きました。これぞまさに擬態の達人です。

【写真】田んぼの上でじっと潜んでいるビンズイ
4. 奇跡のフィナーレ:空を切り裂いた「オオタカ」の叫び
イベントの終了間際、ドラマが待っていました。スタッフが上空の異変に気づき、私がそのシルエットを確認した瞬間、フィールドに声が響きました。
「オオタカだ!!」
その一言で現場の空気が一変しました。全員が反射的にカメラを構えます。青空バックで飛翔する真っ白なボディ。とても格好いいです。羽ばたき飛翔で谷上空を素早く通過していきます。これまでの静寂をすべて吹き飛ばすような、連続したシャッター音。参加者の皆様も最新鋭のOM-1 Mark IIでオオタカの精悍な姿をきやっちできていれば良いのですが。ともあれ、思いもよらずに出現した森の王者オオタカの姿にフィールドは最高の興奮と達成感に包まれました。

【写真】何とか慌てて撮影できたオオタカ
確認できた野鳥
- オシドリ
- マガモ
- キジバト
- カワウ
- オオタカ
- コゲラ
- カケス
- ハシブトガラス
- キクイタダキ
- シジュウカラ
- ヒヨドリ
- エナガ
- メジロ
- ミソサザイ
- ルリビタキ
- ジョウビタキ
- ビンズイ
- カシラダカ
- アオジ
- ソウシチョウ
5. 現場で即戦力!OM-1 Mark II 推奨カスタム設定
今回のオオタカ出現のような一瞬のチャンスで迷わないため、私がお伝えした「野鳥撮影の基本ダイヤル設定」を解説します。
| モード | 推奨シーン | 設定のポイント | シャッタースピード(SS) |
| C1 | 止まりもの | 低ISOを維持し、羽毛のディテールを緻密に描写。 | 1/800以上 |
| C2 | 標準・万能 | 迷ったらここ! 枝移りや歩行など、あらゆるシーンに対応。 | 1/1250〜1/1600 |
| C3 | 飛び出し | プロキャプチャーモードを併用し、飛び出しの瞬間を確実に抜く。 | 1/2500〜1/3200 |
「困ったらC2に戻る」。このシンプルなルールが、現場でのパニックを防ぎ、成功体験へと導きます。
6. 持論:どんな高級レンズでも勝てない「空気の壁」の話
野鳥撮影の世界には、初心者が陥りがちな「機材至上主義」という壁があります。しかし、私が長年のフィールドワークを通じてたどり着いた結論はちょっと違います。野鳥撮影の最大の敵は、機材の差ではなく、レンズと鳥の間にある「空気」そのものだと思っています。
空気の層が解像度を奪う
空気中には湿気、塵、そして地面からの熱による「陽炎(揺らぎ)」が無数に存在します。どんなに100万円以上する最高級レンズ(私が当日使用した150-400mm PROなど)を使っても、鳥との距離が遠ければ遠いほど、この「空気の層」が厚いフィルターとなり、写真の解像度を無慈悲に奪い去ります。センサーサイズの大小でもこれは変わらないと考えています。
「生態を知る」ことが最強のAF
この壁を突破する方法は、高価な機材を買い足すことではありません。「生態を知り、鳥の方から近づいてくれるのを待つ」こと。
-
鳥がどの時間に、どの枝にやってくるのか。
-
どのルートを通って水場へ向かうのか。 これを予測できれば、追いかけ回す必要はありません。一定の距離を保ち、鳥が出てくるのを、また近づいてくるのを静かに待つ。フィールドワークに基づいた生態への深い理解こそが、どんな高級レンズをも凌駕する、野鳥撮影における真の最強スキルなのです。

【写真】私の機材
7. 初心者の強い味方:100-400mm II の真価を総括する
今回、参加者に使用してもらった M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II は、野鳥撮影の門を叩く人にとって「理想の最初の一本」だと思いました。
-
手持ち換算800mmの機動力:フルサイズ機なら巨大な三脚が必要な焦点距離を、軽々と手持ちで振り回せる。とにかく軽い軽い!この「自由さ」が、チャンスへの反応速度を劇的に変えることと思います。
-
驚異の近接性能:なんと最短撮影距離はズーム全域で1.3m、さらに最大撮影倍率は35mm判換算で0.57倍相当!野鳥だけでなく、足元の花や昆虫まで、これ一本でドラマチックにそして大胆に切り取れる。レンズ交換の隙を与えない万能性が、フィールドでの余裕を生みます。
8. 結びに代えて:OM SYSTEM様への感謝とNatureClipsのビジョン
今回のイベントをこれほど充実した内容にできたのは、OM SYSTEM様による多大なるご協力があったからこそです。「カメラを通じて、自然を愛でる人を増やしたい」という共通の想いのもと、最新機材を惜しみなくご提供いただき、参加者の皆様が一心不乱にファインダーをのぞきシャッターを切っている姿が見れたこと、講師としてこれ以上の喜びはありません。深く御礼申し上げます。
カメラを持つことで、世界はもっと面白くなります。 鳥の生態を学び、空気を感じ、「撮らせてもらう」という敬意を持って向き合うとき、あなたのファインダーには、これまで見たこともない景色が広がるはずです。
NatureClips(ネイチャークリップス)では、これからも「自然を知り、記録する」楽しさを伝える活動を続けていきます。また次回の「さんぽ」で、皆様と一緒にシャッターを切れる日を心から楽しみにしています!
