自然の中で育む、新しいチームのカタチ
ー自然環境調査会社の新入社員研修ー
NATURE CLIPSを運営する「株式会社 地域環境計画」は、自然環境調査・コンサルティングを専門とするプロフェッショナル集団です。
毎年4月、新たに仲間となった新入社員たちは、調査技術や業務の基礎を学ぶ研修に取り組みます。その一環として、私たちNATURE CLIPS事務局は、「チームビルディング×自然体験」をテーマに、合宿形式でのコミュニケーションの研修を企画・運営しています。

「話せるチームが強いチーム!」
今年のチームビルディング研修のテーマは、ずばり
「話せるチームが強いチーム!」
環境調査の現場でも、社内でも、「話す」「伝える」「聴く」というコミュニケーションはチームを前に進める大きな力になります。
そこで、私たちはこのテーマのもと、2つの柱を立て、すぐに現場で活躍できる力が身につくような環境とプログラムを用意しました。
- 心理的安全性を体感する
- より自発的に発言する
柱1.心理的安全性を体感する
「こんなこと言っていいのかな?」「間違ってたらどうしよう…」
そんな不安がない状態こそ、のびのびと意見が出せて、信頼し合えるチームの土台です。
今回の研修では、森の中という五感をフルに使える環境で、自分をさらけ出せる安心感=心理的安全性を体験しました。
自然体の自分でいられる場所こそ、チームの強さが育つ場所です。
柱2.より自発的に発言しよう
私たちの仕事は、ただ言われた調査をこなすだけではありません。
自分の知識と経験をフルに活用し、より「自然」にとっても、「仕事仲間」にとっても、そして「顧客」にとっても価値ある提案や判断ができることが、プロとしての第一歩です。
その力を育てるカギは、「自分の言葉で話す」こと。
積極的な発言が、チーム内の意見交換を活性化させ、より良い調査・より深い理解・より的確な判断につながっていきます。
プログラム構成
今回のチームビルディング研修は、
「コミュニケーション」と「自然環境調査」、
2つのプログラムをバランスよく織り交ぜた2泊3日の構成で実施しました。
コミュニケーションのプログラム
研修の舞台は自然豊かな研修施設。室内と野外を行き来しながら、体を使って「対話」と「信頼」を築くコミュニケーションプログラムに取り組みました。
さまざまな制約や条件の異なる課題に挑戦し、時には失敗しながらも仲間と協力して進む中で、「自分はどんなふるまいをしていたか?」「仲間はどうだったか?」をふりかえり、次のプログラムでは「どうしたらもっと良くなるか?」を意識しながら行動します。
こうした繰り返しが、自然と自分自身のコミュニケーションのクセや強み・弱みへの気づきを促してくれます。
今回のファシリテーションは、F-PRIDEのファシリテーター・中島吾郎さんにお願いしました。経験豊富なナビゲーターとして、参加者の気づきを丁寧に引き出してくださいます。
自然環境調査のプログラム
研修の中間と最後には、顧客対応を想定した実践的な自然環境調査と、その調査データをもとにした提案づくりを行いました。
ここで重要なのは、単なる技術研修ではないということ。参加者は、コミュニケーションプログラムで得た気づきと目標を胸に、自ら考え、仲間と協働しながら次のような視点を身につけていきます。
・調査現場で「課題を発見する」目線
・顧客に響く「解決策を立案する」構想力
・実現に向けた「今後必要となる調査スケジュールを組み立てる」計画力
自然と向き合いながらも、人と協力し、相手に伝わるアウトプットを意識する。このプロセスを通じて、新入社員たちは、調査のその先にある「提案力」を磨いていきました。
このプログラムは、NATURE CLIPS事務局が企画・運営を担当しました。
会場
今回の研修会場は、埼玉県比企郡小川町・金勝山の自然に抱かれた「小川げんきプラザ」。山の頂から広がる森の中に位置するこの施設は、宿泊棟と体験活動エリアが一体となったxまさに「自然を全身で感じられる」場所です。
森の中へすぐに飛び出せる立地は、私たちの「体を動かしながら学ぶ」研修プログラムとの相性抜群なのです。
宿泊施設から眺めた朝の金勝山山頂。
下見
研修に先立ち、スタッフが現地に前日入りして下見を実施。フィールド内の危険個所の確認や、昨年との環境の変化を丁寧にチェックし、参加者が安心して研修に臨めるよう、安全面にも万全の準備を整えました。
下見では、ナラ枯れの進行による倒木の増加や、イノシシによる地面の掘り返しなど、昨年と比べて森の環境に大きな変化が見られました。
こうした「現場のリアル」な課題こそが、私たちの研修テーマに直結します。自然の変化に気づき、そこから何を感じ、どう向き合うか。その問いかけが、参加者一人ひとりの気づきと成長を引き出すきっかけとなりました。
研修1日目:ようこそ、小川げんきプラザへ!
4月1日に入社してから約2週間。新入社員たちが、自然に囲まれた小川げんきプラザに集合しました。
ここから始まる2泊3日の研修。初対面の講師やスタッフもいる中で、最初のプログラムは「自己紹介」からスタートです。
テーマはちょっとユニークに
「呼ばれたい名前」
「地元自慢」
「今の気持ち」
「実はわたし〇〇なんです!」
緊張した面持ちで紙に向かい、少しずつ笑顔と笑い声が広がっていく教室。お互いを知ることから、研修はすでに始まっています。
実はこの自己紹介だけでも、すでに研修の本質が始まっています。
「こんなこと書いてもいいのかな?」
「ちょっと恥ずかしいかも」
「ウケるだろうか、それとも滑る…?」
そんな「心のフィルター」や「自己検閲」が自然と働いていることに気づきました。この「ちょっとした戸惑い」こそが、心理的安全性の入口。言葉を選ぶ瞬間にこそ、自分の内面と向き合うきっかけが隠れているのです。
和やかな自己紹介のあとは、いよいよ屋外へ!フィールドに移動して、チームで取り組むコミュニケーションプログラムが始まります。
用意されたのは、ちょっと不思議で、一筋縄ではいかないさまざまな課題たち。声をかけあい、知恵を出し合い、ときにはぶつかりながらも一緒に乗り越えていきます。
そして、そのあとに待っているのが「ふりかえり」の時間。「自分はどんな言動をしていた?」「チームの中でどう振る舞っていた?」そんな問いを通じて、自分自身のコミュニケーションのクセや傾向に気づき、次はどう行動するかを意識するようになります。
自然の中で体を動かしながら学ぶ時間は、机の上では得られない「リアルな学び」をもたらしてくれました。
午後のプログラムでは、コミュニケーションに徹底的に向き合う課題に挑みました。
たとえば、背中合わせの状態で、図形を「言葉だけ」で相手に伝えて描いてもらう課題。あるいは、全員が目隠しをして、ロープから手を離さずに「正方形」をつくるというチャレンジも。
言葉の選び方、伝え方、聴き方。
そのすべてが結果を左右する場面で、参加者たちは改めて「コミュニケーションって、思っていた以上に繊細で奥深い、難しい」ということを実感していきます。
うまく伝わらなかった悔しさ、もどかしさ、通じたときの達成感。そのひとつひとつが、明日以降のチームづくりにつながっていきます。
空き時間の生きもの観察
初日の「ふりかえり」で、明日、意識することをそれぞれに決めて共有したあと、少しの空き時間を見つけて森へと駆け出す新入社員たちの姿がありました。
夜には捕虫網を手に、ヘッドライトを灯して昆虫探し。早朝には、集合時間までのわずかな時間を使って、双眼鏡やカメラを片手に野鳥観察。
自由時間のはずなのに、いつの間にか自然に「調査モード」となっている。頼もしい限りです。
研修2日目:成果につなげる「プロセス」と「時間」の意識
研修2日目は、チームで課題に取り組む中で、「どうやってゴールにたどり着くか」というプロセスの工夫と、「限られた時間をどう使うか」という時間管理の力にフォーカスしたプログラムを展開しました。
単なる達成ではなく、
・誰が、何を、いつやるか?
・今の動きは効率的か?
・振り返ってみて、もっと良い方法はあったか?
といった視点を意識しながら、参加者たちは「目的を共有し、役割分担し、成果を出す」という実践に一歩踏み込んでいきます。
1日目よりも表情が引き締まり、「チームとして成果を出す」ことを見据えた行動が目立ち始めた2日目でした。
自然環境調査会社ならではのプログラム「池を調べて!」
研修半ばを迎え、ここからは、顧客のニーズに応える、という現場視点を重視した実践プログラムに突入します。
「プラザにある池の自然を調べ、その結果をもとに活用方法を提案してほしい」という仮想顧客(演:事務局)からのオーダーに応える形で実施しました。
限られた時間・道具・人での中で、どこまで実態を把握し、どんな価値ある提案ができるか?
仲間同士の連携だけでなく、顧客との対話・ヒアリング・確認といった実務的コミュニケーションも必要になります。
柔らかだった新入社員皆さんの表情が、タモ網などの調査器具を持った瞬間にキリッとなったのが印象的でした。
限られた時間のなかで、チームごとに調査結果と提案内容を整理し、仮想顧客へのプレゼンテーションに挑みます。
相手に伝える、納得してもらう、質問に答える、プレゼンは調査のゴールであり、同時に次の仕事へのスタートでもあります。
発表後には、顧客役のスタッフだけでなく、現場経験豊富な事務局長からのコメントやレビューも。調査の切り口や提案の論理性、発信の仕方に至るまで、プロの視点からのフィードバックが飛び交いました。
最後はしっかり「ふりかえり」を行い、学びを次のステップへとつなげます。ここで得た経験は、現場での実践力に必ず活きてくるはずです。
(あえて目線をそらし、反応をしない聴き手役)
再びコミュニケーションのプログラムへ。今度は、より深いレベルで「伝える」「聴く」という行為の意味に向き合っていきます。
たとえば、聴く側の姿勢や態度が、話し手の「話しやすさ」にどれほど影響を与えるのか。ただ耳を傾けるだけではなく、表情、相づち、目線といった非言語の要素が会話の質を大きく左右することを、実際に体験しながら実感しました。
また別の課題では、時間制限や「伝え方の縛り」がある中で、各自が持つ情報をいかに効率よく共有し、全体像をつかむかという難しさにもチャレンジするなど、たっぷりの内容。
2日目のプログラムが終わりに近づいた夕方、新入社員たちのもとに再び仮想顧客からの新たなオーダーが舞い込みました。
オーダー内容:
「この山の生物多様性の状態を改善しつつ、自然の魅力が伝わる“何かしらのテーマ”を持った観察コースを、来年度の春に向けて提案してほしい」
調査の舞台は、これまで過ごしてきた研修現地の山そのもの。フィールドにどんな価値があり、どんな課題が潜んでいるのか、これまでの研修で培ってきた視点とコミュニケーション力をフル活用して挑む、最後のチャレンジとなります。
3日目の午前中、いよいよ実際に山に入り、調査活動を行います。
3日目:いよいよ最終ミッションへ
朝食を終えたあと、軽く体をほぐしていよいよ最終日のプログラムがスタート。
まずはセンター内で集めた資料や、これまでの活動の中で得た情報を振り返りながら、
山に入るための作戦会議を行います。
「限られた時間で、どこまで見て、何を提案できるか」その問いに向き合いながら、2グループに分かれて現地調査へ出発。現場では、都度相談を重ね、効率よく情報を収集し、どちらのチームも時間内にしっかりと調査を完了して戻ってきました。
調査後は、すぐに提案作成の時間。
仮想顧客にとって「見やすく、伝わりやすいこと」を意識して、ポスターやスライドなどの簡易な資料をその場にあるものだけで作成していきます。
事前の「池の調査・提案プログラム」のふりかえりを活かして、今回はより顧客にとっても、地域の自然にとっても、施設利用者にとっても価値ある具体的な提案が出されていました。
発表後は、他のグループの提案を見たり、仮想顧客からのリアクション、そして先輩社員によるレビューを受けながら、「新たな視点」や「もっと良くできること」に気づく時間となりました。
最後には、今回の合宿研修を「社会人に必要な力」と照らし合わせて整理し、それぞれが5月の配属後に向けて、意識して取り組むべきことを言葉にしました。
そして、すべてのプログラムの締めくくりには、仲間同士でメッセージを送り合いました。
ともに過ごした2泊3日のかけがえのない時間が、笑顔と少しの名残惜しさとともに幕を閉じました。
参加者へのアンケート
研修の前後にアンケートを行ないました。
コミュニケーションについては、以下のような変化があったようです。
- 研修前よりも、行動を起こす前に目的や手順について考えるようになった
- より積極的に発言できるようになった
- 周囲の様子を見て自分の役割を考えるようになった
- 周りの目線を気にすることなく発言できるようになった
- チーム全体を俯瞰する意識が芽生えた
- 会話やチーム力を高めることにおいて、聴く側の態度・姿勢が大切であることを知った
また、業務での考え方や視点については、例えば以下のような発見があったようです。
- 顧客のニーズだけでなく、顧客の自然環境や地域への解像度に寄り添うこと
- 限られたリソース、時間で効率よく効果を出すために、業務全体を俯瞰することが必要であること
- 大きな目標に対しては、段階的にマイルストーンを設けて着実に進んでいくこと
参加企業を募集しています!
私たち地域環境計画では、「自然環境調査会社ならではの自然を活かした研修プログラム」を今後も展開してまいります。
こうしたプログラムは、自然環境調査の現場を想定した内容に限らず、「生物多様性を自社の取り組みに活かしたい」「自然を通じて人材を育てたい」とお考えの企業様にもご活用いただけます。
業種を問わず、自然とのつながりを人材育成に取り入れたい企業の皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の目的やご希望に合わせて、オーダーメイドの研修設計も可能です。
お問い合わせを心よりお待ちしております。