アウトドア好き必見!最前線の自然環境調査のリアルーFieldwork Gloves開発秘話-

アウトドア好き必見!最前線の自然環境調査のリアルーFieldwork Gloves開発秘話-

みなさんは、野外での自然環境調査、生物調査のシーンについて、どんなイメージをお持ちでしょうか?

多くの人がイメージするのは、学者や研究者が自然の中で動植物を観察している光景なのかもしれません。
そういえば、高橋一生さんが、動物行動学を教える大学講師に扮するフジテレビ系ドラマ「僕らは奇跡でできている」の中で「フィールドワーク」という言葉をよく使っていたなと思い出します。
多くの人が持っている「自然環境調査」のイメージは、この「フィールドワーク」のようなモノなのかもしれません。
ですが、現場の厳しさや、特に冬の寒さとの闘いの中での調査の困難さは、想像を超えるものがあります。
私たちが多くの業務を手掛けているイヌワシやクマタカ などの猛禽類の生息調査を例に挙げれば、その過酷さが伝わるでしょう。
舞台は、国内のとある山間部。イヌワシやクマタカの繁殖行動が活発になる厳冬期の1~2月頃。日中の最高気温は5℃、北西の風風力7~8m/s。雪のため視界はやや不良。猛禽類の生息状況をリアルタイムで把握するため、朝8時頃から16時頃まで、時に10人以上からなる調査チームで、雪やしぐれの中で目当てとする猛禽類を探し、追い続けます。
主な装備は双眼鏡、望遠鏡、そして超望遠レンズを装着したカメラ、そして業務用無線機など。
調査範囲内の広域に配置した各調査員は、それぞれ半径1~3km程度の範囲を担当し、猛禽類の姿や行動を監視します。対象種を発見すると、業務用無線機で確認情報等を共有し、他の調査員もそれを追跡します。
写真:2個体で飛翔するクマタカ成鳥
具体的には、このようなイメージです。
調査員Aの無線:
「こちら地点A。地点の北東約2㎞の広葉樹林の尾根付近で、旋回上昇中の「K」(K;クマタカ 無線交信では、密猟防止等の理由で種名を言わないため、クマタカは「K」と呼ぶことが多い)を確認。飛翔高度はAlt.550m。北方向(地点B方向)にゆっくりと移動を開始。左翼の三列風切が1枚欠けているように見えますが詳細は不明。まもなく地点Aからは見失いそうです。手前の尾根に遮られて消失しました。」
調査員Bの無線:
「地点B「K」キャッチ。おそらく同じ個体と思われます。そのままの高度で北方向に飛翔しています。左翼三列風切に欠損を確認。羽根の欠損状況と顔の特徴的な模様から、この地域の「K」の雄成鳥と思われます。滑翔しながら徐々に高度を下げ、地点北側のモミ・ツガ林内に消失。お弁当(餌)は持っていませんでした。消失地点のメッシュは××です」
その後、地点AとBの調査員は、お互いに無線で情報を交換しながら、地形図上に飛翔ルートや確認された行動、観察時間、種の特徴などを記録していきます。
さて、対象種が出現するたびにこのような一連の作業を繰り返しているわけですが、少し想像してみてください。雪や雨の中、さらに風が吹いて冷え込む中で、手袋を脱いで都度野帳に記録すること、これらを毎回繰り返し行うことを。
とにかく冬の猛禽類調査はとても辛くて厳しいのです。
防寒性能の高いグローブは各メーカーから色んなものが多数出回っています。
ですが、私が欲しいのは、冬の生物調査で使えるマジ(真剣)な手袋。圧倒的な保温性、撥水性、そして手袋のままで細かい文字や記号を書ける、手や指にフィットするグローブです。
 
「厳しい冬の調査を快適にしたい」
そんな夢のようなグローブの開発がここから始まったのです。
きっかけは、新規事業立ち上げの検討中にたまたま紹介された、創業40年以上の総合手袋メーカー「株式会社クロダ様」との出会いからでした。 
私たちは、株式会社クロダのご担当者様に、私たちが事業として行っている自然環境調査の状況、特に厳しい冬の調査事情、そして防寒・撥水グローブの必要性等について話をしました。
濡れない:降雨時、降雪時でも雨滴の侵入を許さない高い撥水性能。
凍えない:北海道や冬山での屋外作業を想定した防寒性能。
壊れない:屋外作業で繰り返しハードに使える耐久性。
ゴワゴワしない:作業中の筆記具の取り扱いを容易にするフィット感。
文字が書ける:手袋をつけたまま筆記具で記録のできるグリップ力。
この打ち合わせを受け、クロダ様からはさらに次のような追加の提案を頂きました。
・厳しい自然環境に対応するための掌部分の強化
・作業中の小物の取り扱いを容易にする柔軟性を持った素材の採用。
・冬の低温下でもモバイルデバイスの操作が可能なタッチパネル対応
・持ち運びや収納に便利な折り畳みデザインの採用。
これらの機能を取り入れ、商品コンセプトに基づくサンプル制作に取り掛かりました。
追加の提案を取り入れたサンプルが制作され、社内での試用し結果は次の通りでした。
・撥水性は際立っている。恐ろしいくらい水をはじく。
・掌側の素材が耐久性にやや劣る可能性あり。
・裏地の保温性は良好だが、湿気がこもりやすいかもしれない。
・指先のフィット感がまだ不足している。
これらのフィードバックをもとに、素材の選び直しや改良が提案され、掌側の素材の強化や裏地の湿気を逃がす機能の導入等が決定されました。
このような試行錯誤を重ねながら、クロダ様との協力関係がさらに深まり、厳冬期の自然環境調査に使える最高品質のグローブが完成しました。
その実現のために、以下の5つの先進的な素材を採用しました。 
A. CORDURA(コーデュラ)
 強靭な品質:この素材は通常のナイロンよりも高い強度を持ち、過酷な屋外作業にも対応します。
 撥水生地:雨や雪の中でも、作業を続行できます。
 2wayストレッチ:手の動きを妨げず、手の形にフィットする快適さを提供します。
B. 導電性人工皮革
 モバイル操作の最適化:この素材の導電性により、手袋をしてもスマートフォンやタブレットの操作がスムーズです。
 耐久性:バイクグローブとしても使用されているこの素材は、手を保護しつつも長持ちします。
C. 人工皮革
 グリップ力の強化:滑りやすい状況でもしっかりと物を掴むことができます。
 全天候型:そのグリップ力は雨や雪の中でも維持されます。
D.  タンメンロン
 保温性:微細な起毛が体温をキープし、寒さから守ります。
 高ストレッチ性:手を入れる際のストレスを軽減します。
E. ハイポラ(この商品の秘密兵器!)
 完全密閉:外部からの風や水を完全にシャットアウトします。
 薄型設計:極薄の生地ながら、防風、撥水、保温の効果を発揮します。
そうして、私たちがクロダ様と共同で進めてきた防寒・撥水グローブのプロトタイプが出来上がりました。
社内で試用したところ、その反響は予想以上でした。
・北海道の降雪地でハードに試用したが、撥水性、防寒性、耐久性に問題なし。最初は性能を疑っていたが、使いだしたらこのグローブしか使っていない自分がいた
・試作品を社内展開した際、即購入を希望する者が続出した。アウトドアギアを日常的に使用する当社スタッフから高評価を得た。
・現地調査以外にも、自転車通勤、サイクリング、ツーリング、釣りなど、犬の散歩など、想定外の用途での利用希望が多く寄せられた。
このように1年半の歳月をかけて、株式会社クロダ様との共同開発を果たし、冬の自然環境調査や野外活動を快適に行える防寒・撥水グローブを完成させることができました。
これからも、現場で役に立つ商品を開発・提供していきたいと考えています。
 
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